Thursday, April 05, 2007

『ブッシュのホワイトハウス』その2

Bush Jr.のイラク侵攻がそもそも間違いだったという点はさておき,フセイン政権打倒のためにイラクを攻めなければならなかったとして,ではブッシュ政権は何を失敗したかという点についてのウッドワートの分析を総合すると次のようになる.

1.フセインとその取り巻きは取り除くべきだったが,それ以外の軍と警察の下部組織は治安維持,ひいては国家再建のために残すべきだった.

2.同じ理由で,バース党の解体はもっと慎重かつ漸進的に行うべきだった.

3.占領の初期に,アメリカ軍をもっと大量に派遣して治安の絶対的な安定化を図り,その間に強固な民主的政権を樹立した後,徐々に,しかしすみやかに撤退するべきだった.

この本の内容の大半が,まあ薄々思っていた通りなのだが,1つ発見は,ラムズフェルドのイラク戦争構想が「とにかくフセイン政権を倒して,その後のイラク国家再建など気にせず,とっとと撤退」というものであったことだ.
 したがってウッドワートは確かにBush Jr.を強く批判しているのだが,上記の彼自身のイラク占領政策に関する情勢判断は,実はブッシュやライスのそれに近い.そしてブッシュ=ライスと,ラムズフェルドとは明らかに異なっている.今の段階で急に撤退して,内戦状態のイラクを放っぽり出してしまうのもまた,無責任なのである.
 私自身もブッシュは嫌いだし,アメリカのイラク侵攻は全くの間違い「だった」と思っている.しかし,「これからどうするべきか」という問題に関しては,「即時撤退」という聞こえのいいスローガンが,実はイラク国内でもっとも悲惨な結果を生みかねない,無責任な意見であることも確かなのである.

Tuesday, April 03, 2007

新しい翻訳書

新しい翻訳書を出しました.中・上級のファイナンスの教科書です.良かったら,本屋で手に取ってみてください.

Danthine and Donaldson著,祝迫得夫監訳『現代ファイナンス分析:資産価格理論』