Monday, April 28, 2014

STAP細胞問題

もう,どこから手をつけて良いのやらという感じで報道が過熱化しているが,個人的には日本の報道機関の科学報道に関する基礎体力のなさに今更ながらあきれているのが,一番の感想である.

小保方氏がまともだとは到底思えないが,世界を見渡せばSchön scandalとかヒト胚性幹細胞捏造事件とか,もっとひどい例は過去に幾らでもあった.ちゃんとした科学記者であれば,そういう過去の記録を一般の人々に重要な情報としてしっかり伝えるべきなのに,それを敢えてしないのか,そもそも能力がないのか...。まあ,経済(学)の報道関係者も,そういうのが大半ですが.結局最後は全部,池上彰さんにお願いしますなんていう状況になってしまっていて,少しはマズイとか悔しいとか感じないんだろうか.

GPIF問題

先週の日経の経済教室に載った,伊藤隆敏氏のGPIFに関する提言がかなり過激だったので,私のところにも「お前の師匠は何を考えているのだ」というお門違いのメールや書き込みがあった。伊藤さんの主張についてより詳しいのは,下記のBloombergの記事だが,私自身としてはこれを読んでもいま一つ良く分からなかったというのが正直な感想である。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N45Y1D6JTSF001.html

JGBを減らして株式保有を増やせというポートフォリオ配分の議論については,まあ方向性は理解できる.しかし,具体的な数字としてあげている配分水準の理由づけの前提となる情報・議論が,単純な海外との比較以外は何も示されていないので,これだけで賛成しろと言われても,ハイそうですかという訳には行かない.とは言え,フェルトシュタインも米国の年金を株式で運用した際の期待収益率については,恐ろしく楽観的な発言を長年に渡って繰り返しているので,世界的なレベルで言えば特に過激といえるほどの発言ではないだろう.

一方,GPIFのガバナンス改革についても,伊藤氏が何が最も本質的な問題だと考えているか,具体的にどこをどう改革すればよいと思っているかが,多分御本人がそう思い込んでいるほどには,他の人間・読者には伝わっていないし分かり易くない.とは言え,伊藤案(?)を批判する人達の議論も驚くほどナイーブなので,まったく説得力がない(例えば小幡氏のこれとか).