Friday, March 12, 2021

宮坂 昌之「新型コロナ 7つの謎 最新免疫学からわかった病原体の正体」, ブルーバックス (2020/11)

備忘録

第3章:「特に日本の場合、集中治療室(ICU)の数、人工呼吸器の数が欧米に比べて圧倒的に少なく、人口10万人あたりではイタリア(12.5床)、フランス(11.6床)、スペイン(9.7床)、英国(6.6床)に対して、日本は4.3床しかなく、ICU専門の医師、看護師の数も不足していました。したがって、感染者が増えて重症者が多くなると、医療従事者、医療設備の不足とも相まって、重症者治療が困難となり、実際に東京や大阪ではもう少しで医療崩壊という状態になりました。」(P.75)

 

 第5章:「世の中ではこの6割という数字が独り歩きして、間違って使われていますので、この『大きな誤解』について…。
 私がこの集団免疫のことについて『大きな誤解』があることを理解したのは…。…西浦博氏が、…何も対策をしないと、今後、重症者は約85万3000人、死者は約42万人となる可能性がある、という旨のショッキングな予測をしたのです。この予測は、重症化率1%前後という仮定のもとに、日本国民1億2600万人の6割以上が感染した場合に成立するものです。
 …この予測は、英国で集団免疫論を主導したニール・ファーガソン教授の『何も対策をとらなければ、最悪の場合、イギリス全体の6割が感染する』という主張に合致するものです。…スウェーデンのアンデシュ・デグネル教授も同様の主張をしています。」(P.156) 

「これまでの世界各地の感染事例を見ても、一定地域の中で6割もの人が感染したことがあったかというと、答えはノーです。…中国の武漢やイタリアのロンバルディアなどの極めて深刻な感染状況だったところでも…せいぜい2割ぐらいでした。…ダイヤモンド・プリンセス号でも感染したのは、3711人の乗員乗客のうち、712名と、全体の2割強でした。」(P.157)

「…社会の状況によっては、…集団免疫閾値は時間とともに変わりうるものであることを理解してください。」(P.160)

 

 

 

Friday, January 29, 2021

Iwaisako's Top 5 albums in 2020

  • Dua Lipa, Future Nostalgia, (Warner Records).
  • Kurt Rosenwinkel Trio, Angels Around, (Heartcore Records).
  • Joshua Redman, Brad Mehldau, Christian McBride & Brian Blade, RoundAgain, (Nonesuch).
  • The Pretenders, Hate for Sale, (BMG).
  • Joe Hisaishi, Dream Songs: The Essential Joe Hisaishi (Decca Gold).


Sunday, January 24, 2021

Jアノン

バイデンは不正選挙で勝利したという陰謀論を信じる、日本におけるトランプ信奉者(という情弱クラスター)を巷では「Jアノン」と言うんだそうですが、こういう人達と真正面から取っ組み合ってもしょうがないので、とりあえず五島勉や矢追純一と同じ箱に入れて生暖かい目で見守るというのが良いのではないでしょうか。

Friday, January 15, 2021

Qアノン vs アノニマス

Parlerの投稿がひどすぎて削除される前にハッカーが完全保存。メタタグで議事堂占拠犯がゴロゴロ逮捕 (Gizmod)

「議事堂占拠犯たちはトランプ支持者を装ったANTIFAのメンバー」だと主張している、Qアノン周辺勢力の背景に、ロシアの影がちらつくという話。日本のトンデモ陰謀論者の言い分を鵜吞みにするなら、バイデン=民主党の背後には中共、トランプ陣営の背後にはロシア、共産主義国に操られる米国の二大政党という、大変面白いプロットですな。Netflixあたりでドラマにしたら良いんじゃないかと。

「“病床数多く医師少ない” 患者受け入れ病床ひっ迫の背景は」

 ここ1週間ほどテレビのニュース解説などで、「なぜ病床数が世界一で感染者数も桁違いに少ないのに、日本のコロナ感染症医療はひっ迫しているのか」をちゃんと説明するようになって来ていて、それ自体は大きな進歩だろう。医療供給体制の抜本的な改善・改革が早急に必要なのは間違いない。しかし、昨年末からの感染者の急増はそれとは別問題なので、医療供給体制を整備したらすぐに経済を回せるようになるかという、そういう問題ではないことは明確にしておくべきではないかと。

Tuesday, January 12, 2021

新たなファクターX

ファクターXが、日本のコロナ感染の広がりを抑制するものばかりとは限らない。

「東北大学の押谷仁教授が記者会見し、東京都で今月7日、8日と2日続けて新規感染者数が2000人を超えている感染状況について「疫学的に見ると非常に異常な増え方をしている。ベースラインが1000未満だったものが10日以内に2000を超えることは普通に考えると考えにくい」

https://news.yahoo.co.jp/articles/216bf40a4b8a2fe73025de87355922158083be1d

Monday, January 04, 2021

ファクターX

日本のCovid-19による死亡者が欧米に比べてはるかに少なくて済んできた何らかの理由、山中伸弥教授の言うところのいわゆる「ファクターX」の存在については、否定的な見解(岩田氏篠田氏)と(主に経済重視派からの)無暗に肯定的な意見の両方がある。しかし明確な医学的結論が出ていない以上、政策的には、(1) とりあえずファクターXは存在しないものとして対策を取りつつ、(2) ファクターXが存在するとしたら何なのかの分析は引き続き積極的に行う、という結論しかないように思うのだけれど。

再開

Covid-19発生以降、社会的な問題に関する、ある程度真剣なコメントをSNS上に記載することに、スペース的にも自由度の意味でも限界を感じるようになったので、備忘録も兼ねてリスタート。

Wednesday, January 30, 2019

勤労統計の不正調査の意味するもの(1)


今日の午前中は,諸般の理由で研究室待機だったので:
現政権を擁護する気は無いが,この問題で与党批判をしようというのには根本的に無理がある.確かに,勤労統計の不正調査で勤労者の賃金が過小評価されていたのだとすれば,失業保険や労災の額に直結するので,その対象となった人たちが大きな不利益を被ったことは間違いない.これは確かに大きな問題だ.

一方で,勤労統計の不正が,最近の日本経済のパフォーマンスの評価にどう影響するかは,現時点で全貌が分かっている研究者はほとんどいないだろうし,ましてやマスコミ関係者には皆無だろう.勤労者の賃金の過小評価が、GDP統計の雇用者報酬の過小評価を意味するとすれば,他の部分の推計が何の影響も受けないのであれば,近年のGDP推計も過小評価だったことになる.しかし,雇用者報酬の過小評価は,企業の営業余剰の過大評価とセットになっている可能性が高いので,GDP自体が過小評価だったかどうかはよくわからない.少し雑駁な言い方をすると,経済全体のパイを労働者と資本家に分けるものとして,今回の勤労統計の不正は,労働者の取り分の「水準」を過小評価していたということなので,パイ全体に占める労働者の取り分の「比率(=労働分配率)」も過小評価していたのは,ほぼ間違いない.一方でパイ全体の大きさについては,恐らくは若干は過小評価だったのだろうが,具体的にどの程度の過小評価だったのか,現時点で確信をもって,この位と言える人はいないだろう.

したがって勤労統計の不正調査の影響は,賃金と労働者への分配を過小評価していたという点からも,GDP推計が過小評価だった可能性が高いという点からも,数字的にはアベノミクスの結果を過小評価していたということになる.それが現政権の意図していたことだと言うなら,いったい何の目的でそんなことをしていたというのだろうか?