Tuesday, March 10, 2015

日本の財政と安全保障の関係

この『日本は「戦争をできる国」にはなれない』という文章は,土居さんなので「絶対に財政再建が必要」という結論がまずありきで,その上で東洋経済の特集(『テロと戦争』)にあわせて書いたので,こういう議論になったんだろう.しかし経済学の議論としては良くても,安全保障の議論としては相当に中途半端だ.ここでの暗黙の前提は「日本から突っ掛からなければ戦争は起こらない」というものであり,逆にその前提を取り除いて「日本が良い子にしていても,近隣国から仕掛けられる可能性は否定できない」と認めてしまえば,我が国の財政がそんなに逼迫しているなら,いっそ核武装してしまう方が安上がりで,戦争抑止力としてのコストパフォーマンスは一番高い,というロジックだって成り立ち得る.

国内の不平不満をそらすために,為政者が国外の敵に目を向けさせるために戦争を起こすのは世の常であり,日本も少子高齢化が進んで経済・財政状況がどんどん悪化して行けば,そういう局面が出てこないとは言い切れないのは事実である.しかし今後50年を考えれば,より急速に少子高齢化が進み,不平等がより拡大して,国民の不平不満が蓄積して行く可能性が高いのは,どう考えても東アジアの近隣諸国の方だろう.つまりは,日本がパールハーバーを繰り返すことを心配するよりは,パールハーバー的に周辺国から仕掛けられないようにするにはどうしたら良いか,仕掛けられたときにどうやって上手くいなせば良いのかを考える方が,よほど大事な問題だろう.

だからどうしろいう名案の解決策が,いまの私にある訳ではない.ただ経済原理を踏まえない安全保障論はクソだが,シンプルな経済や財政の議論だけで安全保障の問題が片付くほど簡単な訳は無いでしょう,ということは強調しておきたい.

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