単純に経済学的な問題としては,ギリシャはさほど重要ではない.経済の大きさからみれば,救済するもしないもEU主要国の胸三寸で,どちらに転んでもEU全体に対するダメージにはさほど変わりはない.しかし,もともとギリシャ問題は政治経済学の問題であって,そちらの視点からみるとギリシャの政局とユーロ離脱・残留は,極めて大きな潜在的影響力を持つ.
EU主要国,すなわち独仏にとって最も好ましいシナリオは,ギリシャ国民がこれまでの行状を心の底から悔い改め,平身低頭してユーロ残留を懇願してくるので,極めて苛烈な緊縮政策を条件に「しぶしぶ」救済するというものである.中途半端にギリシャを救済してしまったり,逆にギリシャがユーロを離脱してしまったりすると,経済的に見た問題の核心であるスペインやイタリア・フランスの銀行の救済・再建に税金をつぎ込むことに対する自国の有権者の反応が,極めて厳しいものになるだろう.その意味で,ギリシャのユーロ離脱・残留のチキンゲームはまだまだ続く.
表面上の問題の焦点は次第にEU主要国の民間銀行の救済・再建問題に移りつつあり,ギリシャ問題の持つ意味は薄れつつあるが,それでもギリシャ問題はユーロ圏の今後の行く末に,長きに渡って影を落とし続けるだろう.それはユーロ通貨圏成立のそもそもの理由が,経済的理由よりは政治的理由にずっと強く根差したものだからである.
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