Sunday, June 02, 2013

債券価格と金利

実務家・研究者にとってはあたりまえのことだが、国債の価格と金利は常に逆方向に動く.しかし金融に興味のない一般の人達や、経済学部でも学部の1・2年生にとってはこのことは自明とは言えないので、注意深く説明する必要がある.以下のハフィントン・ポストの記事はそれを丁寧にやろうとして、結果として逆に話をややこしくしてしまっている:

アベノミクスの副作用で住宅ローン金利が上昇?日銀の質的・量的緩和が原因か
"これらの政策により、日銀が国債を買い入れる→市中に出回る国債の量が減る→国債の価格が上がる→国債の利率は変わらないので国債利回りが悪くなる→金利が下がるというふうになるだろうということが予想されていた。"
"日銀の思惑とは逆に、国債を売る→国債が出まわるため国債の価格が下がる→国債の利率は変わらないので国債利回りが上がる→そのため、金利も上がるという動きになった。"

まず割引債(ゼロクーポン債)を想定して議論をすればいいので、「国債の利率は変わらないので...」というくだりは説明を不必要にややこしくしているだけである.加えて、もしあえてこの文章を入れるなら、まず「利率」と「利回り」の違いを説明しておかなければならない.また日銀が「国債価格を上げるため=金利を下げるため」に、国債の買い入れを行っているのは自明のことである。したがって本当に説明しなければならないのは、(1)定義から債券価格と金利(利回り)が常に逆に動くことと、(2)あえて言えば、金融資産に対する需給の関係から「日銀が国債買い入れを増やすと同じ値段なら民間部門への供給が不足するので、国債価格は上昇せざるを得ない」という点であろう.それ以外の部分は特に問題のない記事だったのだが、上記の解説部分だけが妙に引っかかったので、少しコメントしてみました。

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